農業経営の安定を届ける農業共済

令和4年5月4週号

六次産業化を経て。イチジク農家の新たなチャレンジ
美馬和弥(みま かずや)さん(39歳)

「六次産業化を行って得た経験は私の大きな財産です」美馬和弥(みま かずや)さん(39歳)は、自身がたどってきた農業の道のりを振り返った。美馬さんが代表を務める東海市大田町の「(株)美馬園芸」はイチジク100aを中心に栽培する他、作物の六次産業化を行ってきた。
 就農して今年で23年になる美馬さんは、9年前に自社で栽培した作物を使いジャムやピューレなどの加工製造を始め、大府市の「元気の郷はなまる市」を中心に販売している。3年前からは自社の作物だけでなく、地元の農家が作った果実を使用したフルーツ大福や、ピューレを使ったプリンの製造販売を始めるなど、新たな商品の開発にも力を注いでいる。
 一見順風満帆に見える経営だが、「長年六次産業化を行ってきて感じたことは、全ての農業の原点は土づくりにある」と美馬さん。六次産業化は様々な方法で生産物の価値を高めることにあるが、このバランスが難しい。自身のキャパシティを超えた発注を受けてしまい、販売に注力しすぎてしまうと農作業が疎かになり、土を弱らせてしまうことがあった。
熟考の末、今後は加工品を中心とした六次産業化重視の計画ではなく、自身の作ったイチジクそのもので改めて勝負することを決めた。原点回帰としてイチジクの生産に注力し、これまで以上にイチジクの生産量を増やして行く予定。イチジクはハウス、雨除け、露地では収穫・出荷のタイミングがずれるため、一度に大きな負担にならず農作業に集中できると考えている。
 また収穫したイチジクの出荷方法も、従来の段ボール箱を使用するのではなく、出荷先と契約した組立式のコンテナを使用して出荷している。組立ての手間が省略でき、作業のひとつひとつを合理的に行うことで費用や作業時間の軽減に取り組み農作業の時間を捻出している。
働く上で大切にしていることは、日頃より休みを作る事。計画的に作業を行えるようになり、身体と心が休まるため、定期的な休息は必要。「農業には休みがないというイメージがある。そのイメージは無くしたい」と笑顔で語っていた。


イチジクを前に六次産業化の道のりを振り返る美馬さん。