農業経営の安定を届ける農業共済

令和3年1月新年号

新品種開発 農家の声に迅速に対応
 愛知県農業総合試験場環境基盤研究部生物工学研究室

「高温障害に強い米が欲しい」そのような農家の声を実現する一つの近道が遺伝子解析研究だ。
 愛知県農業総合試験場では、農業関係の先端技術として2019年度に国の事業を活用してDNAシーケンサー等を設置した遺伝子解析施設を整備し、育種や病害虫診断法開発など横断的な研究を実施している。
 従来の農作物の品種改良では、目的とする形質を持つ個体の選抜に長い年月を要したが、
遺伝子解析技術を利用すると、遺伝子配列の特性を示す「DNAマーカー」の分析により、交配品種が目的とする形質を持つかどうかを早い段階で判定でき、効率的な品種改良が可能となった。
 ここでいう遺伝子解析は、遺伝子組換えを行うものではなく、特性を把握するための手段であり、品種開発にあたり実際の圃場評価は欠かせない。


DNAシーケンサーでの解析結果を分析する水上室長、鈴木主任研究員(写真左から)

 「遺伝子解析だけでは、品種改良はできない。育種等幅広い分野の担当が横断的に協力することで、研究が実を結ぶ。農業総合試験場は総合的な対応ができるのが強み」と水上室長は話す。
 作物研究室と連携し産地や実需者の協力も得て完成したのが、愛知県初のブランド米「愛ひとつぶ(品種名なつきらり)」であり、通常よりも早いスピードで、高温耐性と良食味を兼ね備えた新品種を生み出すことができた。
 「研究の初期段階では、膨大なサンプルの解析と誤った結果を残さないような注意が必要であり気を抜けないが、改良に成功し、商品が店舗に並び、農家さんからの良い評価を耳にすると報われる」と鈴木主任研究員は語る。
 将来的な食料自給率の向上にも役立つ可能性のある遺伝子解析研究に期待したい。 
(大竹・久野)