農業経営の安定を届ける農業共済

令和2年11月2週号

「トビイロウンカによる虫害」
岡崎市 太田巖さん
愛知県西三河農林水産事務所
農業改良普及課岡崎駐在室 山本敏得主任専門員

 今年、県内で多発したトビイロウンカは、水稲に大きな被害をもたらした。梅雨時期に中国大陸や東南アジアから飛来する害虫で、稲を吸汁し 坪枯れを引き起こす。県内では20年以上大きな被害の発生がなかった。株元に生息し発見が難しく、来年作も油断はできない。そこで、拡大の要因や対策などについて指導機関に聞いた。


岡崎市額田地区のトビイロウンカ被害(10月20日撮影)

 「はじめは大した被害ではないと思っていたが、1週間もたたないうちに一気に広がってしまった」岡崎市額田地区で米・麦・大豆を作付けする太田巖さん(84)はトビイロウンカの被害についてこう話す。県によると、県内の広範囲で捕獲され、9月3日までに西尾市、岡崎市、東栄町、新城市、田原市で被害が確認されている。額田地区では、9月上中旬から収穫する圃場に被害の特徴である坪枯れが見られるようになった。10月に入ると、平野部にも被害が及んだという。


被害状況などについて説明する山本主任専門員

 県西三河農林水産事務所農業改良普及課岡崎駐在室の山本敏得(としなり)主任専門員は、「今年は梅雨前線の活動が強かったため、国内の広範囲にわたってトビイロウンカが海外から運ばれた。岡崎市東部のような山間部では、風が山に遮られ、付近の水田に侵入したと考えられる」と説明する。さらに、飛来後に世代交代を繰り返しながら増殖。梅雨の長雨によって、やや生育が遅れた品種で被害が拡大したと推測されるという。

 県はトビイロウンカに対して、8月17日に病害虫発生予察注意報を、9月3日に病害虫発生予察警報を発令した。「県内では20年以上大きな被害がなかったこと、株元に寄生するため見つけにくく、変色が始まって数日で坪枯れしてしまうことで、防除対応が難しかったと思われる」という。
 来年以降の防除対策について、「トビイロウンカは日本で越冬ができないため、来年も飛来するか分からない。しかし、田植え期や穂ぞろい期による防除薬剤の散布はもちろん、例えば水管理の際に株元を確認し、見つけた場合は速やかに臨時防除を実施することが重要」と説明する。株元まで農薬が届くよう丁寧に散布することが大切だという。

 また、あいち病害虫情報のホームページ(HP、https://www.pref.aichi.jp/site/byogaichu/index .html)では、病害虫に関する情報を掲載。各種警報やトビイロウンカの飛来予測などを適宜発表している。県農業総合試験場は「HPをチェックし、防除対策の参考していただければ」と利用を呼び掛ける。
 NOSAI愛知(愛知県農業共済組合)では、各地から被害申告を受け、既に損害評価を実施。共済金の早期支払いに向けて取り組んでいる。(入山)