農業経営の安定を届ける農業共済

【NOSAIにお任せを】家畜診療所 損害防止事業の紹介

血液と呼吸器病菌在菌検査
牛の健全な発育支える

 本組合の東部家畜診療所では、損害防止事業の一環として、酪肉両畜種を対象に血液検査や呼吸器病菌の検査を実施している。血液検査は延べ16農場・173頭、呼吸器病検査は3農場・30頭の実績がある(2016年度1月末現在)。ともに家畜共済加入者を対象とし、血液検査は1頭につき1回2400円、呼吸器病菌検査は牧場ごとの「在菌MAP」作りが目的のため農家負担はない。牛の順調な発育や乳量維持などにつながると、組合員から支持されている。

定期的な実施で給餌の見直しに

 血液検査の主な目的は、ビタミンA欠乏症の予防と改善、導入素牛〈もとうし〉の個体差の平準化だ。愛知県内の飼育農家の多くは、新城家畜市場をはじめとする県内外の3市場を通じて素牛を導入する。「市場ごとの傾向への対応に血液検査が有効だ」と同診療所次長の外山晴久獣医師は説明する。


外山獣医師(右)から検査のフィードバックを受ける久保田さん夫妻


 実施回数は、月一回や四半期に一回など、経営主の判断により異なる。定期的に実施することで農場ごとの傾向が顕在化するため、給餌の見直しに反映できる。例えば増体に難がある場合、ビタミンA欠乏が疑われる。検査結果に基づき、個体対応ではビタミン剤をはじめとする薬剤投与を、群対応としては飼料給与の見直しを提案する。「検査は未病の察知に有効。なおかつ、成長のピークで出荷するための、最短距離での軌道修正の機会になる」と外山獣医師は話す。
 源氏肥育組合(新城市愛郷、肥育牛190頭、育成牛30頭、繁殖牛50頭)の代表理事を務める久保田和男さん(59)は、「血液検査を継続的に受けることで、牛群改良が滞りなくできている。外山獣医師のアドバイスと併せて、効果を実感している」と手応えを話す。

原因菌6種 有無を調査

 呼吸器病菌検査は、開始から約10年と日が浅い。和牛ET(受精卵移植)産子の死廃事故を低減することから始められた。現在は繁殖牛も対象としている。管内の被検体は生後1~2カ月や離乳後の子牛が多く、投薬の影響がない個体を対象にすることで、正しい検査結果を得ている。
 検査では鼻腔粘膜に付着した菌を採取し、6種の原因菌の有無を確認。牧場ごとに在菌の勢力が異なるが、特に病原性の高い3種(マイコプラズマ・ボビス、パスツレラ・マルトシダ、マンヘミア・ヘモリチカ)に対する抗生剤の感受性を見る。
 肥育牛約100頭、繁殖牛約50頭を飼育する、新城市作手の鈴木明弘さん(80)・太志さん(49)親子は呼吸器病菌検査に協力している。「うちは風邪をひく牛が多い。この検査で、より効果のある予防策を講じることができれば経営の安定につなげられる。MAPの完成にも期待している」と太志さんは期待する。


太志さん(左)が牛を保定し、外山獣医師が牛の両鼻腔に検査用綿棒を挿入


事業の質 洗練へ

 東部家畜診療所の河合裕輝所長は「事業の開始当初から利用している農家もあり、有償でも活用したいと言ってくれている。畜産農家の減少に伴い獣医師も減っており、楽観できない情勢ではある。しかし、現在の事業を着実に履行し、ニーズをより満たす質に洗練させていく」と話す。