農業経営の安定を届ける農業共済

令和8年7月2週号

安城市で広がる水田貯留 農家がつなぐ街の未来


愛知県安城市で、水田の貯水機能を活用して大雨時の浸水被害を軽減する「水田貯留(田んぼダム)」の取り組みが広がっている。これは、水田の排水マスに専用のせき板を設置することで、通常より5㌢程度多く貯水する仕組みだ。6月には市内の全小中学校の給食で、この取り組みによって栽培された米「あいちのかおり」約1800㌔が提供された。


排水マスに設置するせき板を持つ稲垣さん


水田の多面的な機能を知る機会となり、児童らからは「美味しい」「田んぼがダムの役割をしていてすごい」といった声が上がった。この米を育てたのは、同市内で初期から水田貯留に取り組む稲垣巨樹(いながき なおき)さん(50)。20歳で就農し、現在は水稲44㌶、小麦24㌶、大豆24㌶を栽培する。市からの打診を機に始めた稲垣さんは、「一時的な貯水のため、米の生育に対する不安はほぼなかった」と話す。周囲の農家と共に「大変だから辞める」とならないよう、手軽に実践できる仕組みを作ってきた。その甲斐もあり、市からは「河川への出動回数が減った」と一定の効果が報告されている。
 


学校給食への提供について、稲垣さんは「身近な田んぼで水田貯留が実践されていることを、お米を食べることで知ってほしい」と思いを語る。さらに「目先の利益ではなく、安城市が発展するにあたって、農業と工業と商業がうまく共存することで、市全体が総合的に発展してほしい」と地域の未来を見据えている。