平成30年8月4週号
伝統野菜「奥三河天狗なす」 県外にも市場出荷
愛知県設楽町・豊根村
奥三河天狗なす保存会 会長 佐々木富子さん
一般的なナスの5倍も大きく、とろりと柔らかい食感を持つ『奥三河天狗なす』が愛知県北設楽郡で栽培されている。奥三河天狗なす保存会の会長を務める佐々木富子さん(59)は、「この品種を他で作ってもここまでおいしいナスにはならない」と話す。
寒暖差で柔らかくうま味も
奥三河天狗なすは設楽町津具地区が発祥の地とされ、戦前の昭和時代から自家消費用として栽培されてきた。品種は「天狗」で、実は400~600㌘以上になり、一般的なナスの5倍ほどの大きさに成長する。
最大の特徴は柔らかな食感で、地元では焼いて食べるのが最もおいしいと言われる。柔らかさは、奥三河独特の寒暖差の大きい気候が作りあげる。夏でも朝夕が涼しいと、真夏でも秋茄子のように旨味が増す。
12人が栽培に汗
名古屋の市場に勤める同地区出身者が、「地元に本当においしいナスがあるので流通に乗せたい」とJA愛知東に働き掛けたことがきっかけで、市場出荷が始まった。この時、地元に伝わる天狗伝説を元にして、奥三河天狗なすと名付けられた。2007年、愛知の伝統野菜に天狗が登録されたが、奥三河天狗なすと名乗れるのは北設楽郡で取れたナスだけだ。
現在出荷をしているのは、佐々木さんを含め12人。同JAの直売所や地元の無人直売所以外に、名古屋や静岡の市場にも出荷している。去年は保存会全体で1万3千本、6.5㌧を出荷した。また、佐々木さんの元には知り合いのシェフから毎年、会員制交流サイト・フェイスブックで注文が届く。
量・質向上にまい進
佐々木さんは保存会会長として栽培の指導会に参加するなど収穫量や質を上げるための活動に力を入れる。普通のナスと比べて病気や害虫に弱く、対策にはかなり気を使うという。防除する時期の見極めが難しく、初めて見た病気の特定に時間がかかり、1畝を全滅させてしまったこともあった。病気が蔓延してからでは遅いので、予兆があればすぐに防除することが品質向上への道なのだという。
「毎年、気候が違うので難しい。でも全部わかりきっちゃってたらつまらないもんね」とほほ笑む。毎年違うからこそ楽しいという気持ちが、佐々木さんの原動力だ。(飯沼)
▽問い合わせ=JA愛知東津具支店 ℡:0536(83)2314