農業経営の安定を届ける農業共済

平成29年11月4週号

農家の存在あってこそ
地場産米「若水」「夢吟香」で日本酒 安城市 神杉酒造 


 創業200年を超える愛知県安城市の神杉酒造では、市内の農家と協力し、地元産の米を使用した酒づくりを続けている。17代目当主で代表取締役社長の杉本多起哉さんは「米づくりを安心して任せられるプロがいるからこそ、われわれ酒づくりのプロも実力を発揮できる」と話す。


酒造好適米「若水」を栽培する農家ら


  「お酒は口に入れるものなので、原材料は目の届く場所から仕入れる姿勢を貫いています」と語るのは、十七代目当主である代表取締役社長の杉本多起哉さん。以前は酒米を全国各地から調達していたが、2003年頃から安城産の酒造好適米である「若水」に集約し、現在では新品種である「夢吟香」を含め、酒米のほぼ全てが安城産となっている。

 若水と夢吟香は市内の稲作農家により作付けされている。普段から交流が盛んで、酒蔵開放のイベントにも積極的に参加してもらうという。「良い米づくりと良い酒づくりについて、お互いの立場から意見し合える関係です」と杉本さんは話す。
地元の農家が育てた米と、自社敷地内の井戸から汲み上げた矢作川の伏流水を使用して作られた地酒は、八丁味噌を用いた「なごやめし」に合う濃醇な味が特徴だ。徹底して地元産にこだわる姿勢には、多くの苦労を伴ったという。


「原材料の仕入れに力を入れています」と杉本さん

「米作りのプロがいるから酒造りに力を発揮できる」

 若水は酒づくりに適した品種である一方で、米粒が割れやすく精米が難しい。農家に割れにくい米づくりを依頼し、精米作業を外部委託せず全て自社で行うことで克服した。精米歩合を45%とするため、米の状態を見極めつつ120時間以上掛けて精米する。「良いお米が、良い酒を作る」と、安易な妥協を許さない。さらなる品質向上を目指し、安城産の酒米を使用する県内の酒造会社をはじめ、農家、農協、行政機関などが一体となり、地酒に関する勉強会を開催している。自分たちの作った米から生まれた酒に対する農家の関心は高く、率直な意見交換の場になっている。


神杉酒造が手掛ける日本酒などの商品

 「安城の地は、良質の米と水に恵まれている」と杉本さんは語る。さらに、最も恵まれている点として次のように語ってくれた。
 「農業に誇りを持ち、良いものを作る意識の高い農家さんがとても多い。米づくりを安心して任せられるプロがいるからこそ、我々酒づくりのプロも実力を発揮できる。地元の農家の存在こそ、大きな財産だと思う」と力を込める。
(石上)


問い合わせ▽神杉酒造=安城市明治本町20番5号(℡0566・75・2121)
▽ホームページ=神杉酒造株式会社(http://www.kamisugi.co.jp/)